清しこの夜


※サークルの相方、蓮瑤にクリスマスプレゼントとして送ったMoiraのパロディ。
本当は3部作だったのですが、残念ながら3章目しか残っていないのであらすじで勘弁してください。
気が向いたら1、2章も書き直します。

あらすじ:
エレフとミーシャ(子どもVer.)は家にあった白い本から『クリスマス』という行事を知ります。
『クリスマス』を楽しみたい!と思うものの、見たことない『さんたくろーす』に想像を巡らせました。
ひげが生えてて年とってて・・・変態神官!?
これではどんどんサンタが嫌いになっていきます。
パパから
「クリスマスパーティーをしようか!?(うきうき)」
と誘われても
『絶対いや!!サンタさんなんて大ッ嫌い!!(即答)』
と、すごく嫌がってしまうようになりました。
ちなみに。
「探したぞ、ポリュデケウス」
「スコルピアス殿下!」
「アルカディアのサンタクロースと謳われた貴様がこんな山奥で隠遁生活とは・・・。
貴様、なぜソリを捨てた。」
「・・・野心家の貴方には(大好きな子どもたちに大嫌いと言われた気持ちなんて)ご理解いただけないでしょうな」
という感じで、ポリュパパは若いころ『伝説のサンタクロース』として名を馳せていました(笑)
きっとスコルと頑張ってたのに、ポリュパパだけいなくなってスコルは寂しかったんだと思うの!!(落ち着け)
そんなこんなでポリュと離れてもサンタを続けていた、意外と子ども好きなスコルは双子と出会います。
しかし、生まれつきの人相のせいで双子に嫌われてしまいました。スコル、大打撃。
本当はプレゼントもあげたかったのにね。
そんなわけでようやく本編です。(あらすじ長っ!)
クリスマスの夜のお話です。今回はレオンが主役。季節外れのアップですがどうぞお楽しみください〜。



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「…ここか。」
レオンは暗闇の中、息を殺してたたずんでいた。
その眼光は厳しく、手にしたエモノが震える。それは同志のはたせなかった夢であり、Romanである。それをレオンは託されたのだ。なんとしても成功させなければ。

眼前には古びた建物があった。多少の崩れはあるものの、かなり丈夫のようだ。
レオンは静かに建物の中に入る。構造は把握しているとはいえ、実際と図面が違うというのはよくある話だ。細心の注意が必要である。

足音を消し、気配を探り、そっと目的の部屋にたどり着く。

――子どもが二人寝ている。
双子だろうか、よく似た顔で仲良く眠っている。
レオンはこの温かい光景にそっと息を落とす。
(これは…スコルピアス様がご命じになるはずだ。)
そう、今回レオンに託した相手こそこの国の第2王位継承者、スコルピアスである。
先日、伝説のサンタに会いに行くと出かけていった彼は、普段見ないほど消沈して帰ってきた。
しばらくは自室にこもっていたが、今夜になり、白い袋をかかげ出てくる。
『レオンティウス、貴様が雷神の力を持っているからなんだという。この私を妾腹とさげすむならさげすめばいい。サンタには雷神の力など不要なのだっ。アルカディアのサンタになるのはこの私だ。はーっはっはっはっ』
若干足がふらついている。何かショックな出来事があったらしい。
『その私が貴様に仕事を与えてやろう。あくまで私の仕事を手伝わせてやるにすぎんっ。だから送り主byスコルサンタ、宅配業者byレオンティウスだからなっ』
そう言って白い袋をレオンに託し、自室に戻る。
ちなみに
『…手をのばし…掴んだはずの宝石は…手のひらから…こぼれ落ちるものばかり〜…』
淋しげな鼻歌付きである。
レオンは断る気は毛頭なかったが、輪をかけて断れなくなった。

そういう事情により現在に至る。
レオンは子どもたちの枕元にそれぞれプレゼントを置く。本当に可愛い。
思わずじっくり眺めていると双子が目を覚ます。
「…誰…?」
「…赤い服…もしかして、サンタさん…?」
しまった。こんな風に起こしてしまうつもりも、夢を壊すつもりもなかったのに。
サンタは元来おじいさん像である。それがこんなに若いのでは夢も何もあったものではない。
きっとすぐに「サンタなんていないんだ、パパが買ったんでしょ?」なんて言い出すに違いない。
レオンが狼狽する目の前で双子は意外な反応をしめした。
二人そろってギュッと抱きついてきたのだ。
「よかったーっ!!本物のサンタさんってこんなに若くてカッコイイ人だったのねっ!」
「サンタさん、来てくれてありがとうっ!それからもっと怖い人だと思っちゃってごめんなさい」
「優しそうなお兄さん、ありがとう!」
「この前の怖いおじさんみたいなサンタだったら絶対にやだもんねっ」
憐れ、スコルピアス。
しかしなんとか夢を壊さずにいられたらしい。しかも激カワ上目づかい。
レオンは思いがけずとびっきりの笑顔のプレゼントをもらってしまった。
(こんな兄弟がいたら毎日楽しいだろうな)
彼等の頭を撫でながら笑みをこぼす。
「二人とも今年はすごくいい子だったからね。私からのクリスマスプレゼントだよ。これからも二人仲良くね」
『うんっ!』
双子はクスクスと照れくさそうに笑い、はっと思い出したように窓辺へと走り戻ってくる。心なしか肩を落としている。
「サンタさん…実は…このあいだお父さんにひどいことしちゃったんだ。クリスマスなんて祝わないって。でも僕たちやっぱりクリスマスをしたくなっちゃって…」
彼等の手には小さなクリスマスツリーがあった。わからないながらも飾り付けたのか、願い事が書いた短冊やお化けの顔の小さなカボチャがさげてあった。
「お父さんにひどいこと言ったのに…こっそり作ったりして…まだ謝ってもいなくて…だからわたしたち、プレゼントをうけとれませんっ。ごめんなさい…」
瞳いっぱいに涙をため、それぞれプレゼントを差し出す。
よく見るとツリーの短冊には「あしたにはごめんなさいをちゃんという」「サンタさんにもごめんなさいするっ」と決意表明がされていた。彼等は心から楽しみたかったのだろう。他の短冊には「お父さんとお母さんにもサンタさんからプレゼントがとどきますよーに。」と書いていた。
レオンは彼等をそっと抱きしめた。
「そのプレゼントは君たちを良い子だと思った私があげたんだよ。」
正確にはスコルピアスだが。
「でももし、君たちが悪いことをしたと思うならちゃんと『ごめんなさい』を言うまでプレゼントを開けちゃだめだよ。大丈夫、必ず言えるよ。だって私にはちゃんとごめんなさいが言えたからね。」
「…でも…ゆるしてくれないかも…」
「おちこんでた…」
「〜〜んー、じゃあおまじないをしてあげるよ。うまくいくおまじない。」
そう言ってそれぞれの額に口づけてあげる。
エレフはくすぐったそうに、ミーシャは顔を赤らめていた。
「これで大丈夫。サンタのおまじないは魔法より効くからね。
――また来年、逢おうね。」
「サンタさん、ありがとうっ!今度はいい子にしてるからっ!」
「絶対ぜったいいい子にするからっ!約束だよっ!また来てねっ!!」

レオンは名残惜しみながらも闇に溶けていく。
(これは、来年も来なきゃいけないな。スコルピアス様、怒るかな…)
苦笑しながらも彼はそんな苦労などあの双子のためならなんてことないように思えた。
だって約束したのだから。


また逢おうと。





後日。
無事にプレゼントを開けられた子どもたちは今日も仲良く過ごしていた。
エレフは少しずつ泣き虫が治るようになり、ミーシャは優しく、なんでも話すようになった。
「お父さんっ、わたしね、大きくなったらサンタさんのお嫁さんになる!」
我が家のお嬢様、爆弾発言。
なんでも話すのはいいことだが、明らかにパパの寿命は縮まった。極端に。大幅に。
来年、サンタさんは無事に彼等に会えるだろうか…。
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